大洲市肱南地区にある、大正時代から残る赤煉瓦倉庫「旧程野製糸繭倉庫跡」。
歴史のある建物で、臥龍醸造はビールを醸造・販売している。
2024年3月、大洲市のキウイを使用したビールが完成した。
そんなキウイビールに込められた思いや醸造の背景に迫る。
愛媛県大洲市では使われていない古民家を改修し観光資源にする、という活動が行われている。
一方で、臥龍醸造を運営する株式会社アライでは、障がいを持つ方たちへの「新たな就労機会の提供」を行っている。
一流の商品を作ることで付加価値を創出し、障がいを持つ方の収入につなげ、町おこしに参加することでやりがいを感じる。
そんな背景があり、2021年9月に臥龍醸造はオープンした。
これまでに定番のIPAやセゾンだけでなく、大洲産シルクパウダーを使った「シルクエール」や、愛媛県八幡浜産のみかんを使用した「八幡浜みかんエール」など、地元に根付いたビールを製造してきた。
「作って美味しいだろうなっていうビールは積極的に作りたいんですよ。」
そう語るビール開発を担当する林田さんは無類のビール好き。大洲でできたビールで乾杯できたら楽しいだろう、というのが様々なビールを製造する根本のモチベーションである。
そこで臥龍醸造が新たに挑戦したのが「キウイビール」だった。
あまり知られていないが、愛媛県は全国No.1のキウイ生産量を誇り、その多くは瀬戸内海に面する長浜で作られている。
キウイビールに使われているキウイも、大洲市長浜の農家である西村さんが作ったものだ。
西村さんは前職で転勤を繰りしていたが、そんな生活や都会での生き方に疑問を持ち、起業をしてみたいという気持ちもあったため、実家の農家を継ぐことを決めた。
西村さん自身、日本有数の生産量を誇る長浜のキウイをアピールしたい、そして様々な方法でキウイを楽しんでもらいたいという思いがあった。
そして2023年11月、臥龍醸造の林田さんとご縁があり、キウイビールの醸造計画が始まった。
西村農園のキウイ作りにおけるこだわりは、農地の環境作りにある。
キウイ畑だけでなく、それを取り巻く山や竹林の整備をすることで、風通しも良くなり獣害も減る。
キウイの枝を支えるのに使用していた竹をチップにしてたい肥にするなど、自然に良いことを取り入れることで、さらに美味しいキウイづくりにつなげている。
また、愛媛県大洲市長浜の未来を本気で考える会「長浜未来協議会 ミライズ」に参加。イベントや広報活動を通して、長浜の地域活性化に取り組んでいる。
「これまでのビールは大洲の方に飲んでもらいたくて作っていました。ただ今回のキウイビールでは初めて全国の方を意識し、ビール好きが唸るようなものを目指しました」
林田さんの言葉通り、キウイビールの製造には多くのこだわりが詰まっている。
理想とする味になるまで、試行錯誤を重ねながら、キウイの味を殺さないように調整した。キウイの個体によっても熟すタイミングが異なるため、熟したタイミングでそれぞれを冷凍し、全て冷凍し終わると皮剥きをしていく。そのような繊細な作業工程が、先述した障がい福祉の就労機会につながっている。
また、林田さんが思い描くキウイビールを実際に形にしているのは、醸造技術者の窪田さん。
東京の老舗醸造所で就業した後、2年にわたり臥龍ビールの製造を担当し、取材当日も精力的にビールを仕込んでいた。
「ビールを通して長浜のキウイの美味しさを知ってもらう」
完成したキウイビールは臥龍醸造と西村農園の想いに違わぬ、香りだけでなく、しっかりとキウイの味が残る非常にフルーティなビールに仕上がった。
苦みは少なく、ビールが苦手な方でも美味しく頂くことができる。料理に合うというよりは燻製やナッツ、チーズと合うビールだ。
また、通常は出荷することができない規格外のキウイを加工用として使用することで、サステナブルにも貢献している商品となった。
猫が描かれたラベルは、長浜沖に浮かぶ猫の島「青島」、そして西村農園で飼っている猫をイメージしている。その背後には自由な猫を羨ましそうに佇む犬の姿。
かわいらしいデザインが、より一層飲む人を楽しませてくれる。
愛媛県大洲市は日本屈指のキウイ産地。
しかし、それを知っている人は多くないのが現状である。
今回新しく発売したビールをきっかけに、大洲のキウイの美味しさが日本中に広がること。
「長浜キウイIPA」からは、臥龍醸造と西村農園がビールに込めた、熱い思いを感じることができる。
是非、手に取って味わっていただきたい。
長浜キウイIPAの主な販売店舗はこちら。
※2024年5月19日より、臥龍醸造での店舗販売を休止しています。
当面の間は臥龍醸造を除いた下記店舗に加え、併設の「yumehonoka」にて販売しています。
臥龍醸造、西村農園、 長浜未来協議会ミライズの情報はこちらから。