蔵に住む生きた酵母との関わり合いの中で、「舌」でしか確かめられない味を、代々受け継ぎ守り続けている。大洲市風土記によると1874年創業。しかし、八代目豫三次さんによる1889年頃の日記に、「代々醤油蔵を営む」と記されており、実際はさらに以前から営んでいたと考えられる。
原料の選定から仕入れ、製造まで、醤油・味噌づくりにおける全ての工程を自社で行う梶田商店。こうした自社醸造を貫徹する醤油蔵は、今や日本全国を見渡しても非常に稀な存在となった。
ここでは、百年以上受け継がれる杉桶で、今なお一年半以上という長期醸造を行っている。最も大切な原料の大豆は、生産者を訪ね歩き、信頼の置ける大豆生産農家に出会った。小麦・塩も然り、国産原料・無農薬・自然栽培だから美味しいのだと、安易に語って欲しくはない。
一点の妥協もない原料、製法、姿勢、味。これが何より、料理人たちからの信頼に繋がっている。そうした稀有な蔵を一目見たいと、国内はもとより、海外から訪れる人も少なくない。北欧の世界的なレストラン「noma(ノーマ)」から、遥々料理人が米麹造り体験に訪れたこともある。梶田商店は、人の心を動かす味を目指している。随所に滲み出る醤油への熱意は、私たちに“本当に良いもの”が何たるかを教えてくれる。心が躍るほど本物の醤油がここ大洲にある。