肱川と大洲城下町について
愛媛県の南予地方に位置する大洲市は
肱川の恵みにより栄えてきた町。
江戸時代、城下町として栄えた古き良き町並みは
今もその面影を色濃く残す。
山間部から瀬戸内海沿岸まで
清流の流れに沿って多様な文化が根付いている。
川はかつて
山ほどの糧や人を運んだ
山々の間を縫って、大洲盆地にたどり着く肱川。
平地で川は一気に開け、ゆるやかな流れとなり、まちに恵みをもたらす。
人々は川を拠点とし、養蚕や木蝋、木材物流などの産業を育んだ。
また肥沃な土壌で農業が栄え、里芋がよく育つことから「いもたき」の文化が興った。
上流から河口まで、それぞれの土地に、山・川・海の幸。
大洲の素材を知る職人の手仕事が生み出す和菓子や地酒など、
古くから受け継がれる味は、今も変わることなく愛される。
城下町から生まれた
文化や美意識
川のほとりに文化は生まれるというが、肱川も然り。
豊かな流れが潤した土地に、城が建ち、城下町が栄え、殿様文化は市井へ受け入れられた。
例えば、歴代の大洲藩主も遊賞の地として好んだという、臥龍の淵。
青々と茂る新緑や、赤く燃ゆる紅葉のその色を、澄んだ水面に映す。
その美しさに魅せられた大洲出身の名士・河内寅次郎は
四季の移ろい、侘び寂び……日本人の美意識を映す建築を京の匠に造らせたという。
木蝋貿易で財を成した彼もまた、肱川の恩恵を受けたひとりだった。
朝霧や雲海に包まれる時間
秋の終わり、日ごとに寒さが増してくる頃、それは現れる。
肱川の流れに沿って、山から吹き下ろした夜の冷気は
東雲に、中流域にまたがる大洲盆地に留まり、やがて霧となる。
朝靄が立ち込めた世界は、まるで仙境の地の如く。
そこだけぽっかりと、現実から切り離されたように
掴みそうで掴めない、泡沫の世界。
大洲の愉しみ方
お宿
城下町大洲で暮らすように泊まることができる古民家宿、肱川上流に静かに佇む温泉宿など、逗留することは、旅先を深く知る喜びをもたらす。大洲の人々や暮らし、時間の狭間に身をゆだね、盆地を流れる穏やかな風と肱川のせせらぎに耳を澄ます。飾られた場所ではなく、ありのままの町や空間の中で、特別な滞在を。
体験
移りゆく時代の中、変わらないままそこに在るものを探す。歴史を辿り、美味を堪能し、伝統芸能を愉しむ特別な体験。情緒あふれる城下町をめぐる夫婦旅や、時の移ろいを肌で感じながら歴史に思いを馳せる一人旅など、愉しみ方はさまざま。穏やかに時の流れる大洲の地で、思い思いのひと時を過ごす旅を。
お食事処
大洲藩、六万石の城下町。殿様への献上品として培われた、職人による妙味。四百年、絶えることなく受け継がれてきた銘菓や、山から海へ、悠々と流れる肱川によりもたらされた、海・山・川の幸、肱川の上流で、蔵人によって手塩にかけて育てられた清酒など、流れに寄り添い生きる先人の知恵がもたらした、風土の食をいただく。
地産もの
大洲の銘菓や旬の幸、工芸品等が所狭しと並ぶのは、100年以上前に建築された和洋折衷の建物「おおず赤煉瓦館」と、観光総合案内の機能も兼ね備える「大洲まちの駅あさもや」。定番から一点ものまで、「品」や「粋」が感じられるものばかり。心惹かれる大洲土産を、旅の思い出とともに持ち帰る。